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category翼の刻印編 終章

扉の先に(前編)

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 サヴァキス=オンドワールの造反事件から四日後、同盟各国との調整も概ね終了し、法国は日常を取り戻しつつあった。
 コール=ジニアスは香薬所内にある巡導師専用の医療施設に向かって、所内の廊下を歩いていた。直属の上司であるフロウ=バルデアスが、前線で負傷して入院を余儀なくされていたため、事後報告を兼ねた見舞いにやってきたのだ。
 国の関連施設だからか、執政院とくらべてもあまり代わり映えのない殺風景な廊下を歩きながら、コールは眉間に皺を寄せる。日常的に難しい表情をしている事の多い彼だが、今日の縦皺は殊のほか深い。何故なら、元老院の汚いやり口に腹を立てているからだ。
 国内に発布された公式文書には、ドラゴンを召喚し、セルジアンゼルを襲撃したのはどこの国にも属さぬ呪術師であり、それを冠位者達で成敗したので被害は無かったとあった。だが、自国造反者の仕業である事を発表するのを避けた政治的判断は理解できぬ訳ではないが、フロウとロードモリオーンが時間稼ぎの為だけの捨て駒にされた事には納得できない。二人とも、元老院側の意に染まぬ鼻つまみ者。自分たちの安全が確保されるまで保(も)てばいい、あわよくば戦死してくれれば尚の事良いとの思惑で前線に出されたのは想像に難くなかった。
 お偉方が禁呪『ルヤンカス』の陣を組んで海水から竜を錬成し、リンドブルムを撃墜したとの噂がまことしやかに流れていたが、それが真実なのかは怪しいところだ。対価を必要としない呪力錬成のみで造られた水竜一体で、はたしてどこまで正真正銘の魔獣に対抗できるのか。
 どちらにせよ、彼らのやり口には憤りを感じるし、その中にかつての師も混じっているのには怒りを通り越して、そんな者を師事していた己自身が情けない。
 苛立ちを滲ませた視線を冷たい銀縁眼鏡の奥に隠しながら、思考を別のものへと切り替える。
 簡潔に説明できるよう、報告事項を頭の中で反芻しながら歩いていると、気がつけば上司の病室のすぐそばまで来ていた。角を曲がり、壁伝いに数歩進んだ所で、部屋の中から聞きなれぬ男の声がしてくる。
 怪訝に思って中をそっと覗くと、そこには寝台に半身を起したフロウと、豪奢な金髪を持つ男の背中が見えた。
 こちらに気がつく様子もない上司の俯きがちな素肌の横顔は、いつもの彼女と違って少女のようだった。
 出直すつもりで一歩下がるも、そこから足が動かない。盗み聞きなどするべきではないと判ってはいるが、どうしてもこの場を離れる事が出来なかった。
「君は、変わらないね。昔から、強くて、聡明で、綺麗で・・・」
「かいかぶりすぎよ」
「そうだね・・・本当は、繊細で、脆いんだってこと、あの頃の僕には気付けなかった」
 男の言葉に、コールは壁に背を預けて俯いた。
「僕の過ちは許される事じゃない。まして、今更君に言うべき事じゃないとわかっている。だけど・・・僕は君を愛してる。この先歩む道が互いに交わることはないと分かっていても、それでも、ずっと君を愛している」
 自分よりも一回り程年上の上司。恋の一つや二つ、あったとておかしい事ではない。だが、その台詞に、二人の間のただならぬ過去が垣間見えた気がして項垂れた。動揺に、手のひらが湿る。
「僕はもう行くよ。あの子のこと、一人で抱え込むんじゃないよ、フロウ」
 返事をせぬ彼女に、一方的に辞去を告げる男の声がして、コールはあわてて元来た道の反対側の角の陰まで移動する。
 気付かれぬよう身をひそめながら、自己嫌悪に陥った。
――――僕は一体、何をしているんだ。
 やがて出口へと向かって歩いてゆく男の顔が少しだけ見えた。
 初めて見たその人物は、上司とほぼ同年代に見受けられた。微かな憂いを滲ませた横顔は、女性が放って置かないだろうと思わせる程の美形だった。若い頃はさぞかしもてた事だろう。今でも、それなりにもてるに違いない。
 所作や歩く姿に品の良さが感じられ、遠目に映る服も派手ではないが上質だった。
 これ以上はないというくらいの敗北感を味わいながら、病室の方へと戻る。どんな風にして入って行けば良いのかと迷っていると、中から押し殺したような泣き声が聞こえて瞳を閉じた。額に片手を当ててため息をそっと一つ。
 諦めたように踵を返して、歩きながら上着の内側を探る。
 中から取り出した精霊銀の杖を眺めて苦笑する。憧れの人に近付きたくて、少々無理をして買った代物だ。軽く、丈夫で、なおかつ呪力操作に優れた相棒を振るう。
 万が一にも、二度とあの男は見たくなかった。
『オン ロード』


 ジゼット=マリアナは執政院の所属部署内で、山積みになった書類の始末に追われていた。
 最高責任者であるフロウは休職中。その穴を埋めるために、上役のモナセムは代打で飛び回っている。頼みの綱のコールは、見舞いに行きたくていてもたっても居られぬ様子だったので、後々の事を考えて「ロードライトへの報告、任せても良いかしら?」と言ってやった。二つ返事で出かけて行く男を内心呆れ気味に見送った後、仕方なくこうして事務仕事に勤しんでいる。
 実は部署にはあと数名所属しているのだが、五位や六位の尻の青い連中には任せられない機密書類ばかり。でかでかと【秘匿】と赤字で記されている物など、怖くてまかせられはしない。
「ほんっと、コールはしょうがないわね」
 書類に目を通すだけでも手間取っているから、作業は遅々として進まない。一向に片付く気配のない山を眺めながら、どこにもぶつける事の出来ない疲労から来る苛立ちを、同僚への悪態を吐くことでやり過ごす。そんな、最中だった。
 乱雑に積まれた書類の、中ほどから大きくはみ出た耳がかすかに戦いで(そよいで)いる。それを怪訝に思って目の端で追うと、一番上の書類が今にも浮き上がろうとしていた。
 それを手で押さえこんで後ろを振り返ると、そこにはコールが立っていた。
「あきれた・・・」
 彼の非常識さに、思わず口をついて出た。
 元老院までとはいかなくても、それなりの結界が施されているここに、飛んで帰ってくる者など居ない。
 結界を突き抜けるのに、呪力を桁外れに消耗するからだ。分かりやすく言うならば、骨が折れる上にかなり疲れる。
 それを事もなげにやってのけるコールの実力は相当なものだが、今はそんな事に関心している場合ではない。
「ちょっとコール、何考えてんのよ。いつも規則だなんだって口やかましいアンタが違反するなんてどういうりょうけ・・・ん」
 同い年、同じ三位同士で同僚としての付き合いの年数が長い分、互いに物言いには遠慮がない。ジゼットは日頃の調子でまくしたてていたが、いつもと違う彼の様子に語尾は失速してゆく。
「コール?」
 ひどく沈んだ様子で俯く彼。
「君が以前言っていた事の意味が、やっと解ったよ。君の言うとおり、目に見える部分しか見ていなかった」
 中身をきちんと見てほしかったのなら、己がまず本質を見極めるべきだったのだ。それをやらずして過ごしてきたのだから、外側だけ評価されたとて文句は言えまい。
「ロードライトは、血も肉も心もある人間だ。やっとそんな事に気がつくなんて、僕は馬鹿だ。大馬鹿者だ!」
 ジゼットは、何故上司がいつもあんな服装をしているのかと問うた。それを、やっと理解した。あれは、殺伐とした男性社会を生き抜いてゆくための鎧だ。わざと女性である事を誇示するような化粧は素顔を隠す為の仮面。扇情的な衣服を身にまとい、男を油断させて攻撃を受ける事を最小限にとどめ、軟らかい核(こころ)を守っている。
 何故なら、彼女もまた、切られれば血を流す【人】だから。
 コールの様子を見つめていた彼女は虚を突かれたように一瞬驚いて、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「そうね、大馬鹿者ね・・・。でも、今のアンタなら抱いてあげても良いわよ」
 ふふふ、と色っぽい口元が艶やかに笑う。
 ジゼットの言葉に、彼のこめかみがぴくり、と動く。うつむいていた表を彼女の方に向けて、鋭い視線を投げて寄こす。
「君に抱かれるのなんか、まっぴらだね!」
 そして、不機嫌な表情を崩して笑った。
「でも、朝まで飲みたい気分なんだ。付き合わないか?」
「アンタの驕りよ?」
 彼女なりの気遣いに、感謝の念がこみ上げた。

―――借りができてしまったな。

 だが、こんな貸し借りなら、悪くない。
「ああ、ディナー付きだ」
「いいわ、朝まで付き合ってあげる」





 夜の帳が下りる頃、男は寝台の上に横たわる女を己が素肌で包み込む。
 男の裸の胸元―――心臓に近い部分に隆起した丸い膨らみから、いくつもの筋が放射線状に広がる。その先は、やがて皮膚の下へと流れて消えている。
 それは、男と女と繋ぐ契約の証しだった。
 抱き寄せた女の体には痛ましい程の皺が寄り、すでに細胞を活性化するだけの力は残されていない。株が弱っているのだ。
「ごめんね、イリデュー」
「主さま・・・」
 シェルビーは愛おしげに、イリデュセスの額に唇を寄せた。
 戦いの後、消耗しきった呪力を戻すのに数日を要した。その間、枯れて行く彼女を放置する訳にも行かず、せめてもと自分の体に宿してみたものの、やはり元には戻らなかった。呪力が残っている状態なら、細胞を活性化させてどうにか元に戻してやることもできたのだが。
 どちらにせよ、こうなることはあらかじめ予測していた事だ。悔やんでいてもはじまらない。
「今度のアンタは、どんな色をしてるのかしらね」
 そうだ、二度と会えぬ訳ではないのだから。ただ、姿が変わってしまうだけ。
 不安げに見上げてくるイリデュセスに、優しく笑いかける。
 シェルビーのその様子に、彼女は彼にしかわからぬ安堵の表情を浮かべた。
「愛してるわ、イリデュセス」
 甘く囁きながら、彼女の身体を引き寄せて口づける。
 そして、男は女の海を泳ぐ。


 シェルビーはイリデュセスの身体から自分のそれをひきはがして、上から彼女の表を覗きこんだ。その顔を、流れ落ちた金髪が撫でている。
 しばらくそうして愛しい女の面影を記憶に焼き付けるように眺めた後、寝台を降りて素肌の上からガウンを羽織った。
 そして、脇机の上に置かれたボトルの中身をグラスに注ぐ。
 グラスを手に寝台に腰かけて、それを口にしながらイリデュセスの肢体を眺める。
 彼女の腹が、少しずつ膨らみかけている。中には、新しいイリデュセスが実っているのだ。
 彼女と契約を交わしたその時に、シェルビーは人として遺伝子を残す事を放棄した。その代償として手に入れたのがイリデュセスだ。
 シャトヤンシーの核を己の身体に取り込む事で、彼は彼女の主になった。
 人の本能そのままに彼女を求める事は許されない。彼女と交わるという事は、遺伝子を次の代へ繋ぐという事。すなわち、現在の姿も記憶も失い、遺伝子のみを引き継いで新しく生まれ直すことだから。
 それでも、彼は彼女を愛した。それが、彼らの愛の形だった。
「早く熟しなさい・・・イリデュー」





「そうですか・・・・私は、サヴァキスの人生まで捻じ曲げてしまったのですね」
 命を削る戦いから7日後、フロウは法王居室を訪れていた。
 レザンが淹れてくれた茶には口もつけず、あの日の事を訥々(とつとつ)と話し合う。
 メリィのように、弟子のかつての定位置に座って、サヴァキスの造反の理由を師から聞いていた最中であった。
「そのように言うてはならん。結局、どう生きるかを決めるのは己次第であろうに」
 いつになくこたえている様子の愛弟子を慈愛に満ちた表情で見つめながら、レザンは更に言葉を紡ぐ。
「サヴァキスは、静かな瞳をしておった。あやつは、何もかも判っとった。
 ・・・それでも、ああする事でしか己を肯定することが出来なんだのじゃろ。
 まこと、哀れでならぬ。救ってやりたかったの」
 そうですか、と憔悴した顔つきでフロウは俯いた。
「時々、思うのです。私が人を救うなどとは、驕りなのではないのかと。
 ・・・メリィを不幸の奥底まで突き落した張本人である私に、そんな資格があるのかと」
「資格など必要あるのかの?人を救うなどとは、確かにおこがましい物言いかもしれぬ。じゃが、人はみな大なり小なりの傷を抱え、自分以外の誰かと関わりを持ち、癒し、癒されながら人生という長旅を歩んで行く。資格など持たずとも、己が在るという事で誰かを救っていることもある。わしらは人じゃぞ?フロウ。出来る事などたかが知れておる。己ができる事を精一杯にやればよい」
 項垂れた弟子の頭に、翁はその皺だらけの手を置いた。
 いつまでたっても少女の頃と変わらずに慈しんでくれる師の暖かな言動が、女の胸に染みる。四十に手が届くかという年齢になろうというのに、いつまでも小娘のように弱い自分が情けなかった。
 だが、今日だけは、師に甘えても良いかと思えた。
 まどろむような沈黙がしばらく続いた後、ぬるくなった茶を飲み干して、席を立った。
「もう行くのかの?」
 名残を惜しむように、老爺が訊ねてくる。
 無理もない。こうしてゆっくりする暇が、ここ数年はなかったから。
「メリィの様子を見てから帰ります」
 ふわり、と笑いながら、レザンに返す。
 その様子に、翁は満足そうに頷いた。
「うむ。そうすると良い」
 

 法王居室の二階の寝台の上で、メリィは静かな眠りについていた。呼吸のたびに上下する胸元が見えなければ、死んでいるのではないかと思う程。
 彼女の様子を診るためにレザンが用意したのだろう、寝台のそばには小さな椅子が置かれていた。フロウはそれに腰を下ろして、弟子の顔を見つめた。
 身体には攻撃を受けたような表だった外傷もなく、火傷から来る不調も快方へと向かっている筈であるのに、少女は一向に目覚める気配を見せない。
 薬の副作用から来る昏睡は致し方のないことだが、それにしても長すぎる、というのがレザンの見解だった。
 フロウは美しい流線を描いた眉を寄せて、溜息をついた。
 理由もなく眠っているはずではないだろう。きっと、あの時交わした契約が、何らかの形で影響しているのだ。
「クロス、聞こえるか」
 呼びかけに答える保証はなかった。だが、他に弟子を救う方法がわからなかった。
 女のその問いに、少女の身体から光の粒子が巻き上がり、白い鳥が姿を現す。そして、その枕元に着地する。
『我に何用だ』
 会話が成立することに胸をなでおろし、フロウはその瞳をまじとみつめる。
「名付けの契約の対価・・・一生涯の苦痛、私が負う事はできないか?」
 鳥の瞼が、一瞬だけ瞬く。
『お前は竜がどうやって生まれるか知っているか』
「何を言って・・・私が話しているのはそういうことでは」
 行き過ぎた言葉を引き戻し、それを噛み砕いてはっと我に帰った。クロスの言わんとする事の意味を測りかね、フロウは戸惑いを抱えて白い存在を覗き込んだ。
『竜の血を錬成して核を創る。それを、魔獣の母であるエキドナの腹に宿して産み落とす。そうやって、竜は生まれるのだ』
 初めて耳にするはずの事柄に、既視感を感じるのは何故なのか。フロウは思考を巡らせる。しばらく記憶を捲って、ようやくそこに行きついた。
「私がやったことが、偶然それと同じだったと言いたいのか?」
 竜の血と胎児を錬成し、アレクシスの身体に宿した。結果、生まれたのが哀れな双子だ。
『人に宿された為に、本来ならばエキドナの腹の中で造られるはずの肉体が、我には存在せぬ。器がなくば、どんなものとて存在することは出来ぬ』
 だからこそ、アレクシスの腹の中で育っていた胎児にとり憑いた。それがメリィだったのは、偶然でしかなかった。運命の神が投げた賽(さい)の目の出方が違っていれば、過酷な星を背負っていたのは双子の兄の方であったかも知れぬのだ。
 魔獣には心というものが存在しない。それは、矮小な能力しか与えられぬ事と引き換えに、こちら側の者だけに与えられたものだ。
 だが、半分人の細胞を混ぜた核には、不完全な概念が残った。
 一つの器に二つの概念(こころ)を宿した為に、クロスの存在は不安定なものになった。まして、人の脆弱な肉体では、竜の血の暴走を抑える事は出来なかった。
 自らと同じ苦しみを願ったフロウの呪いは、メリィを異端にする事によって成就した。出目を選ぶ事が出来ないが故の、運命の皮肉さ。
『人は生きるために他の命を犠牲にする。植物なり、動物なり。水のみでは生きられぬ。それはあちら側の者とて同じ事。名付けの対価とは、肉を持つ者をこちら側に留めて置くために生じる苦痛。契約を交わした主人の呪力を喰らい、血をすすり、細胞を侵食して命を保つ。さながら、寄生虫のようにな』
 病魔に侵されてゆくように、徐々に身体を蝕まれてゆく痛みは想像を絶する苦しみに違いない。フロウはそれを想像して、己の背筋が凍りつくのを感じた。
 では、メリィは一体どうなってしまうのか。
 冷たい汗が、首の裏側に流れて行く。
『だが、生かさねばならぬ器が我にはない。主が付ける名は、本来こちら側に引きとどめておくための鎖だが、メリィは我に名を与える事によって、この不安定な概念に確かな形をもたらした。それが、今の我だ』
「では・・・」
『ああ、苦痛を受ける事も、今までのように暴走する事もない。我という使い魔ができた分、これまでとは多少違うだろうが・・・な』
 クロスの言葉に、ほっとして緊張を解く。
 しかし、ならば何故―――
「どうして、メリィは目覚めないんだ?」
『言ったであろう、我は肉(からだ)を持たぬ、と。呪力を結晶化させて竜の身体を造ったのでな、極限まで消耗している。元々竜の血のせいで呪力量は並ではないが、それでもこの様だ。生命維持に必要な細胞以外を眠らせなければ、生かす事ができなかった。この先は、正直我にもどうなるかはわからぬ』
「そんなっ!」
 悲鳴のように吐き出し、肩を落として俯いた。片手で瞼を覆う。
 弟子の未来は、まだ、透視え(みえ)ない―――





「それじゃ、メリィは・・・・」
 赤毛の少女は、朱茶の瞳に涙を溜めて、翁に縋りついた。
 己の胸に顔を埋めて嗚咽するチェレッタの背中を、レザンの枯れた手があやす様にポンポンと柔らかく叩く。
 暖かな午後の陽ざしの中で、少女の泣き声が響いていた。





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〔テーマ:自作小説(ファンタジー)ジャンル:小説・文学

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